2010
講師セミナー2010年度
100209 GCOE先端生命科学特論
講師:石浜 明先生(法政大学 日本生物科学研究所 教授)
日程:2010年2月9日(火) / Feb. 9th(Tue), 2010
10:00-11:30 1コマ目:基礎講演1
13:00-14:30 2コマ目:基礎講演2
14:45-15:45 3コマ目:応用講演 公開セミナー
基礎講義 (10:00-11:30/13:00-14:30)
「細菌ゲノムの転写制御」
20世紀後半、生命現象を分子の基盤での理解を目指した分子生物学の勃興興隆で、生命科学の革命が起きた。遺伝子DNAがRNAを経て、タンパク質に発現されるセントラルドグマなど、現在我々が知る多くの、新たな概念は、モデル生物・大腸菌の研究から生まれた。ゲノム全構造の解明から、大腸菌のゲノムには、約4,400遺伝子が含まれていると推定されているが、実験室培養で発現する遺伝子は、1,000-2,000である。多くは、大腸菌が自然環境で生存する際には必要な遺伝子と予測されているが実証はない。ゲノムにある全遺伝子から、どれを、どの程度に発現するかは、どうして決まっているのであろうか。遺伝情報発現制御は、原核生物では、主として転写の段階、特に転写開始の頻度調節で行われる。ゲノム転写制御の先端を概観し、今後の課題を展望する。
応用講義(公開セミナー) (14:45-15:45)
「細菌細胞の個性: その分子基盤」
多細胞生物は、個性をもった細胞の集合体であり、分化は個性発現の過程である。動物や植物を素材とする限り、異種細胞の平均値しか得られない。この問題を回避する目的で、単細胞の細菌を素材として分子生物学が勃興興隆した。ところが最近、単細胞細菌もまた、自然環境では、集団社会を形成し、細胞毎に役割分担があることが示唆されている。バイオフィルムは、その典型である。細菌細胞の個性は、細胞ごとのゲノム発現パターンの差に由来する。大腸菌ゲノムには、約4,400の遺伝子が含まれ、その発現パターンは,約2,000分子のRNAポリメラーゼの分配で決定される。転写装置のゲノム遺伝子間での分配は,約300種の転写因子で支配される。我々は、300種転写因子全ての制御標的遺伝子群を同定し、調節機構の全体像の解明を目指した研究を開始した。単一細胞でのゲノム発現パターンを分析し、その決定要因となる転写因子の動態との相関解析を終局目標とした系統的研究の現状を報告し討論したい。
100713 GCOE先端生命科学特論
講師:楠見 明弘先生(京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)再生医科学研究所 教授)
テーマ:『液体の細胞膜を働かせるメゾ機構:1分子追跡と操作による解明』
日程:2010年7月13日(火) / Jul. 13th (Tue), 2010
10:00-11:30 1コマ目:基礎講演1
13:00-14:30 2コマ目:基礎講演2
14:45-15:45 3コマ目:応用講演 公開セミナー
基礎講義『液体の細胞膜を働かせるメゾ機構:1分子追跡と操作による解明』
細胞膜の2次元液体構造は地球上の全ての細胞で基本的に共通で、これはDNAと同様です。これは、進化の過程で細胞が獲得した「2次元液体の細胞膜をはたらかせるための基本戦略」が存在することを示唆します。これを見つけたいというのが、私たちの研究室の「野望?」です。このような研究に資するため、1分子観察と操作の手法(1分子ナノバイオテクノロジー)を発展させてきました。1分子法のおかげで、一応、細胞膜がはたらく仕組みの理解には、たった4つの基本的性質を知れば、ほぼわかるのではないか、という、厚かましい考えに到達しました。その中身は、講義のときに。乞ご期待!
公開セミナー『3 つの細胞膜動的メゾ構造が担うシグナル変換:1分子追跡・操作の楽しみ』
細胞膜の2次元液体構造は地球上の全ての細胞で基本的に共通で、これはDNAと同様です。これは、進化の過程で細胞が獲得した「2次元液体の細胞膜をはたらかせるための基本戦略」が存在することを示唆します。このような基本戦略を理解するため、生細胞中で1分子観察と操作をする、1分子ナノバイオロジーの手法を発展させてきました。これを用いて、最近、膜コンパートメント、ラフト領域、タンパク質の会合体形成の組合せによって、細胞膜で起こる多くのシグナル変換機構が起こっていることがわかってきました。これについて簡単にまとめます。講演というより紙芝居ですので、お気軽においで下さい。
101125 先導研非常勤講師講演会
日時:11月25日(木)14:00〜17:00
場所:先導研伊都地区 CE11 2F会議室
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講師:
京都大学再生医科学研究所 教授
附属ナノ再生医工学研究センター バイオメカニクス研究領域
安達 泰治 先生
講演題目:
『細胞運動におけるアクチン細胞骨格構造システムのバイオメカニクス
Biomechanics of Actin Cytoskeletal System in Migrating Cells』
概要:
細胞運動において,アクチン細胞骨格は,細胞内で力学構造システムを形成し,常に重合・脱重合,切断等によりダイナミックに変化している.これらの過程において,多くの生化学的因子だけでなく,細胞骨格に作用する張力や変形などの力学的因子が重要な役割を果たしている.本講演では,力学的因子と生化学的因子との相互作用から生み出されるアクチン細胞骨格の動的なシステム構築過程の理解を目指し,実験と数理モデリング・シミュレーションをリンクさせながら進めているバイオメカニクス研究を紹介する.
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講師:
大阪大学情報科学研究科 准教授
バイオ情報工学専攻
古澤 力 先生
講演題目:
『細胞分化の動的モデル 〜幹細胞システムの理解へ向けて〜』
概要:
多細胞生物を構成する多様なタイプの細胞が、どのような機構によって発生し維持されているかを理解することは、現代の生物学の重要なテーマの一つである。また、近年の幹細胞研究の進展により、幹細胞が持つ分化能について理解することへの関心が集まっている。そうした問題に対して本研究では、多細胞生物を内部ダイナミクスを持つ細胞が動的に相互作用している系として捉え、いかにしてその相互作用の中から多様な細胞状態が出現し得るか、その機構を計算機実験によって検証した。その結果、分化能を持つ幹細胞タイプの細胞は複雑に振動する発現ダイナミクスを持つこと、そしてそのダイナミクスを生み出し得る制御ネットワークの構造などを明らかにした。実際の幹細胞の系において、予想された振動的な発現ダイナミクスが同定されつつあることを含め、計算機実験ベースの細胞分化研究の可能性について議論したい。
雑誌会2010年度
100513 X-S. Yue et al. “A fusion protein N-cadherin-Fc as an artificial extracellular matrix surface for maintenance of stem cell features”, Biomaterials 31, 5287-5296 (2010)/担当:坂下
100522 Z.D. Smith et al. “Dynamic single-cell imaging of direct reprogramming reveals an early specifying event”, Nat. Biotech. 28, 521-526 (2010)/担当:奥田
100522 B. Ladaoux et al. “Strength dependence of cadherin-mediated adhesions”, Biophys. J. 98, 534-542 (2010)/担当:久保木
100612 E. Urban et al. “Electron tomography reveals unbranched networks of actin filaments in lamellipodia”, Nat. Cell Biol. 12, 429-435 (2010)/担当:鶴崎
100612 T. Viebuchen et al. “Direct conversion of fibroblasts to functional neurons by defined factors”, Nature 463, 1035-1041 (2010)/担当:中島
100619 C. Matschegewski et al. “Cell architecture-cell function dependencies on titanium arrays with regular geometry”, Biomaterials 31, 5729-5740 (2010)/担当:松尾
100619 J. Xie et al. “The differentiation of embryonic stem cells seeded on electrospun nanofibers into neural lineages”, Biomaterials 30, 354-362 (2009)/担当:坂下
100918 J. KW Lam, S.P. Armes, and S. Stolnik, “The involvement of microtubules and actin filaments in the intracellular transport of non-viral gene delivery system”, J. Drug Target. 19, 56-66 (2010)/担当:中島
100918 M.W. Betz et al. “Macroporous hydrogels upregulate osteogenic signal expression and promote bone regeneration”, Biomacromolecules 11, 1160-1168 (2010))/担当:陣内
101002 C. Grashoff et al. “Measuring mechanical tension across vinculin reveals regulation of focal adhesion dynamics”, Nature 466, 263-267 (2010))/担当:坂下
101002 H. Miyoshi et al. “Control of highly migratory cells by microstructured surface based on transient change in cell behavior”, Biomaterials 33, 8539-8545 (2010)/担当:上村
101023 R. Hashizume e al. “Morphological and mechanical characteristics of the reconstructed rat abdominal wall following use of a wet electrospun biodegradable polyurethane elastomer scaffold”, Biomaterials 31, 3253-3265 (2010)/担当:安藤
101023 A. Tero et al. “Rules for biologically inspired adaptive network design”, Science 327, 439-442 (2010)/担当:松尾
101030 K. Kim et al. “Epigenetic memory in induced pluripotent stem cells”, Nature 467, 285-292(2010)/担当:鶴崎
101030 F.M.Kievit et al. “Chitosan-alginate 3D scaffolds as a mimic of the glioma tumor microenvironment”, Biomaterials 31, 5903-5910 (2010)/担当:門脇
101120 J. Tang, R. Peng, and J. Ding, “The regulation of stem cell differentiation by cell-cell contact on miropatterned material surfaces”, Biomaterials 31, 2470-2476 (2010)/担当:安藤
101120 K. Oshima et al. “Mechanosensitive hair cell-like cells from embryonic and induced pluripotent stem cells”, Cell 141, 704-716 (2010)/担当:久保木
101204 Y. Dong et al. “The improvement of fibroblast growth on hydrophobic biopolyesters by coating with polyhydroxyalkanoate granule binding protein PhaP fused with cell adhesion motif RGD”, Biomaterials 31, 8921-8930 (2010) /担当:上村
101204 S. Konagaya et al. “Design of culture substrates for large-scale expansion of neural stem cells”, Biomaterials 32, 992-1001 (2011)/担当:陣内
100115 J.P. Kenndey et al. “The mechanically enhanced phase separation of sprayed polyurethane scaffolds and their effect on the alignment of fibroblast”, Biomaterials 31, 1126-1132 (2010)/担当:門脇
110115 J.L. Young et al. “Hydrogels with time-dependent material properties enhance cardiomyocyte differentiation in vitro”, Biomaterials 32, 1002-1009 (2011)/担当:奥田