2012

講師セミナー2012年度

120411 研究室セミナー

講師:理化学研究所 超精密加工技術開発チーム 研究員
三好 洋美 博士

日時:4月11日(水)17:00〜

場所:伊都キャンパス CE11-108 ミーティングルーム

講演題目:『マイクロ構造化表面における細胞の運動状態決定メカニズム』

要旨:
生体内における細胞の運動状態は、細胞外マトリックスおよび周囲の細胞から構成される細胞外環境との相互作用により多様に変化する。細胞-マイクロ構造間の相互作用が細胞の運動状態決定に果たす役割は、これまで主としてマイクロ構造における細胞の定常的な運動状態を基に評価されてきた。そこで、本研究では、平面からマイクロ構造へと移動してきた細胞の運動状態の遷移に着目して運動特性を評価した。基礎的データを得ることを目的として、シンプルなマイクロ構造、単線溝と格子状溝を用いた。細胞は、平面上での三日月型の形状と直線的な移動運動が、運動遷移プロセスの解析に適するケラトサイトを用いた。マイクロ溝に遭遇したケラトサイトは、マイクロ溝を下って登って横切ったり、平面とマイクロ構の境界で方向転換したり、溝内部に進入して移動効率を大幅に低減したりなど、非常に多様な運動状態を示した。細胞がいずれの運動を顕著に示すかは、マイクロ溝のサイズ、配置に依存した。また、平面と溝状構造の境界における細胞形状の詳細な観察により、ケラトサイトの葉状仮足は溝側面に沿って突出し、格子状溝においては、溝と溝とから形成される柱状構造を抱きかかえるように突出することも分かった。これらの結果を基に、細胞がマイクロ構造を感知し、運動状態を変化するメカニズムについて考察する。

120524 先導研客員教授講演会

講師:大阪大学 産業科学研究所 教授
永井 健治 先生

日時:5月24日(木)15:00〜

場所:伊都キャンパス W3-314 物質系4番講義室

講演題目:『生理機能の光操作と可視化技術』

要旨:
近年になり蛍光指示薬を用いた細胞レベルの機能イメージングが盛んに行われている。しかしながら個体レベルの観察においては、蛍光指示薬は励起光を必要とする事に起因する、①励起光の散乱による組織深部からのシグナル低下、②自家蛍光の発生、③励起光によるサンプルのダメージといった欠点があるため有効な手段とはならない。一方、化学発光は励起光を必要としないため個体レベルの機能イメージングにおいて有効であると考えられているが、ライブ観察するのに十分なシグナル強度は得られない。本セミナーでは、このような蛍光と化学発光による観察法の欠点を克服する次世代のイメージング技術について我々の最近の知見を交え紹介する。セミナーの内容は以下の 3つである。

1) 自由行動下にある小動物個体内の腫瘍組織の可視化
2) Ca2+やATP等の生体物質を高感度・高コントラストに捉えることが可能な自動発光型プローブの開発
3) 自動発光型機能プローブと光遺伝学的ツールとの併用

また、このような生理機能の光操作と可視化技術の応用によりアプローチが可能となる「少数性生物学」についても時間が許す限り議論したい。

121024 先導研非常勤講師講演会
講師:
関西大学 化学生命工学部 化学・物質工学科 教授
岩崎 泰彦 先生

日時:10月24日(水)14:00〜15:30
場所:工学部四番講義室 W3-314

講演題目:
『生体分子に倣ったポリマーバイオマテリアルの設計と機能』

概要:
疾病治療および診断・検査等、医療関連分野において利用されるポリマーマテ リアルの安全性や生体親和性を高めるために、生体内に存在する分子の構造や 仕組みを学び、これに倣うことは有効である。我々は、生体に含まれる多量元 素のひとつであるリンを含有するポリマーバイオマテリアルの設計と機能評価 に関する研究を進めている。本発表では、細胞膜の構造に倣って合成されたリ ン脂質ポリマーによる生体機能界面の調製と核酸の主鎖構造を模した新たな生 分解性ポリマーの特性ついて紹介する。また、演者らが最近取り組んでいる動 物細胞の膜画分と合成ポリマーとの複合化についても議論したい。

121024 先導研非常勤講師講演会
講師:
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)臨床応用研究部門 教授
江藤 浩之 先生

日時:12月13日(木)11:00〜12:00
場所:先導研伊都地区 2F会議室

講演題目:
『iPS細胞技術を用いた輸血製剤のオンデマンド供給システム』

概要:
このたび、山中伸弥教授とジョン・ガードン教授にノーベル賞が授与されるこ とが決まった(12/13の講演のときには授与済み)。ジョン・ガードン教授が 核移植によって世界ではじめて成功した“初期化”現象を、山中教授はたった 4つのOct3/4, Sox2, c-Myc, Klf4をコードする遺伝子をマウスやヒトの線維 芽細胞に導入する事で再構築した生物学上の驚くべき発見を成し遂げました。 そしてこの“初期化”された細胞は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)と命名さ れた。

iPS細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)に形態、増殖、遺伝子発現などの点で類似 している。ES細胞に比べ倫理的問題を回避でき、遺伝的背景や移植免疫に関わ るHLAタイプなどが異なる多様な個人から樹立可能であるという利点をもつた め、京都大学iPS細胞研究所ではHLAホモ接合体ドナーから構築したヒトiPS細 胞を予め作製し、将来の様々な再生医療に寄与するための細胞ストックを準備 する研究を推進している。同研究所の私どもの研究室では、「iPS細胞から血 液を創る」というテーマで輸血製剤を代償あるいは置き換えるための血小板と 赤血球を作製しようとしている。これらの血液細胞は核を有さず、放射線照射 後のヒトへの投与が可能であることから、ヒトiPS細胞より分化誘導した細胞 を用いる際に常に危惧される癌化等の危険性を回避できるという大きな利点を 有している。血小板は繰り返し輸血を必要とするような血液疾患患者の場合、 HLAを一致させた血小板輸血製剤を準備する必要があることが知られる一方、 我が国では近年の献血人口の極度の減少および献血HLA登録ドナーの高年齢化 により、こうしたHLA一致血小板の供給が難しい状況が多くなってきている。 こうした状況に対応するべく、開発を進めているiPS細胞ストックシステムを 利用した血小板輸血製剤の開発について紹介する。

雑誌会2012年度

120414 T. Teramura et al., “Mechanical stimulation of cyclic tensile strain induces reduction of pluripotent related gene expressions via activation of Rho/ROCK and subsequent decreasing of AKT phosphorylation in human pluripotent stem cells”, BBRC 417, 836-841 (2012)/担当:奥田

120414 Y. AR White et al., “Oocyte formation by mitotically active germ cells purified from ovaries of reproductive-age women”, Nat. Med. pulished online 26 Feb, 2012/担当:久保木

120512 K. Kulangara et al., “Nanotopography as modulator of human mesenchymal stem cell function”, Biomaterials 33, 4998-5003 (2012)/担当:安藤

120512 K.Toyoshima et al., “Fully functional hair follicle regeneration through the rearrangement of stem cells and thier niches”, Nat. Commun. pulished online 17 Apr, 2012/担当:陣内

120526 F. Yang et al., “The prolonged survaial of fibroblasts with forced lipid catabolism in visceral fat following encapsulation in alginate-poly-L-lysine”, Biomaterials, published online Apr 2012/担当:門脇

120526 N. Kojima et al., “Rapid aggregation of heterogeneous cells and multiple-sized microspheres in methylcellulose medium”, Biomaterials 33, 4508-4514 (2012)/担当:上村

120609 H. Hama et al., “Scale: a chemical approach for fluorescence imaging and reconstruction of trasparent mouse brain”, Nat. Neurosci. 14, 1481-1483 (2011)/担当:緒方

120609 S. Wakao et al., “Multilineage-differentiating stress-enduring (Muse) cells are a primary source of induced pluripotent stem cells in human fibroblasts”, PNAS. 108, 9875-9880 (2012)/担当:内海

120707 A.D. Doyle et al., “Micro-environmental control of cell migration-myosin IIA is required for efficient migration in fibrillar environments through control of cell adhesion dynamics”, J. Cell Sci. 125, 2244-2256 (2012)/担当:安藤

120707 K. Jeon et al., “Self-renewal of embryonic stem cell through culture on nanopattern polydimethylsiloxane substrate”, Biomaterials. 33, 5206-5220 (2012)/担当:上村

120915 C. Pang et al., “A flexible and highly sensetive strain-gauge sensor using reversible interlocking of nanfibres”, Nat. Mater. 11, 795-801 (2012)/担当:陣内

120915 W. Wu et al., “Fast-degrading elastomer enables rapid remodeling of a cell-free synthetic graft into neoartery”, Nat. Med. 18, 1148-1153 (2012)/担当:門脇

121006 S. RP. Polio et al., “A micropatterning and image processing approach to simplify measurement of cellular traction forces”, Acta Biomat. 8, 82-88 (2012)/担当:濱野

121006 J.C. Nawroth et al., “A tissue-engineered jellyfish with biomimetic propulsion”, Nat. Biotech. 30, 792-797 (2012)/担当:久保田

121013 N. Egawa et al., “Drug screening for ALS using patient-specific induced pluripotent stem cells”, ScienceTranslationalMedicine 4, 145ra104 (2012)/担当:内海

121013 M-H Lee et al., “Mismatch in mechanical and adhesive properties induces pulsating cancer cell migration in epithelial monolayer”, Biophys. J. 102, 2731-2741 (2012)/担当:緒方

121027 J. Dai et al., “The effect of co-culturing costal chondrocytes and dental pulp stem cells combined with exogenous FGF9 protein on chondrogenesis and ossification in engineered cartilage”, Biomaterials. 33, 7699-7711 (2012)/担当:門脇

121027 J.M. Tse et al., “Mechanical compression drives cancer cells toward invasive phenotype”, Proc. Natl. Acad. Sci USA. 17, 911-916 (2012)/担当:久保木

121110 Y-G. Ko et al., “Directing cell migration in continuous microchannels by topographical amplification of natural persistence”, Biomaterials. 34, 353-360 (2012)/担当:久保田

121110 H. Lin et al., “Influence of decellularized matrix derived from human mesenchymal stem cells on their proliferation, migration and multi-lineage differentiation potential”, Biomaterials. 33, 4480-4489 (2012)/担当:上村

121201 J. Liu et al., “Soft fibrin gels promote selection and growth of tumorigenic cells”, Nature Materials. 11, 734-741 (2012)/担当:濱野

121201 G.-Y. Chen et al., “A graphene-based platform for induced pluripotent stem cells culture and differentiation”, Biomaterials. 33, 418-427 (2012)/担当:内海

121208 L. Han et al., “Directional cell migration through cell-cell interaction on polyelectrolyte multilayers with swelling gradients”, Biomaterials. 34, 975-984 (2013)/担当:緒方

121208 Z. Zheng et al., “Reprograming of human fibroblasts into multipotent cells with a single ECM proteoglycan, fibromodulin”, Biomaterials. 33, 5821-2831 (2012)/担当:奥田

130112 J.B. Sneddon et al., “Self-renewal of embryonic-stem-cell-derived progenitors by organ-matched mesenchyme”, Nature 491, 765-768 (2012)/担当:安藤

130112 D.J. Lipomi et al., “Skin-like pressure and strain sensors based on transparent elastic films of carbon nanotubes”, Nature Nanotech. 6, 788-792 (2011)/担当:陣内

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